バランス理論(Balance Theory)
心理士・こころ
3者(3人、あるいは2人と1つの対象物)の関係は常にバランスが大切であり、
仮に、一時的にアンバランスな関係に陥ったとしても、それは徐々にバランスする関係に向かうという説です。
ここでは3者の関係に言及していますが、世の中の関係は3者の関係の組み合わせで表現されますから、
世の中の人間関係全般に適用できる説と言えるでしょう。
以下、バランス理論について、考えてみましょう。
4種類のバランスする関係
人(P)が相手(O)を好きなケースを P+O と表し、人(P)が相手(O)を嫌いなケースを P-O と表します。
この時、人(P)と相手(O)、および対象物(X)がバランスする関係には以下の4種類があります。
- P+O, P+X, O+X
- P-O, P-X, O+X
- P-O, P+X, O-X
- P+O, P-X, O-X
対象物(X)は、物、趣味、アイデア、出来事あるいは人でも成立します。
わかりやすくするために、人(P)→私、相手(O)→彼、対象物(X)→読書に置き換えると、以下のように表現されます。
- 私は彼が好き、また私は読書が好き、そして彼も読書が好き。
- 私は彼が嫌い、また私は読書が嫌い、そして彼は読書が好き。
- 私は彼が嫌い、けれども私は読書が好き、そして彼は読書が嫌い。
- 私は彼が好き、けれども私は読書が嫌い、そして彼も読書が嫌い。
対象物(X)が人の場合には、3人の人の関係を表し、バランスする関係は以下のように表現されます。
- 友達の友達は、友達である。
- 敵の友達は、敵である。
- 敵の敵は、友達である。
- 友達の敵は、敵である。
完全には成立しない場合もあるでしょうが、概ね成立すると感じるのではないでしょうか。
4種類のアンバランスな関係
また、人(P)と相手(O)、および対象物(X)がアンバランスな関係には以下の4種類があります。
- P+O, P-X, O+X
- P+O, P+X, O-X
- P-O, P+X, O+X
- P-O, P-X, O-X
先ほどと同様、人(P)→私、相手(O)→彼、対象物(X)→読書に置き換えると、以下のように表現されます。
- 私は彼が好き、けれども私は読書が嫌い、なのに彼は読書が好き。
- 私は彼が好き、また私は読書が好き、なのに彼は読書が嫌い。
- 私は彼が嫌い、けれども私は読書が好き、また彼も読書が好き。
- 私は彼が嫌い、また私は読書が嫌い、また彼も読書が嫌い。
アンバランスな関係も、『私は彼が嫌い』のケースにはやや疑問が出るかも知れませんが、
『私は彼が好き』のケースではアンバランスな関係に納得できるのではないでしょうか。
そして、このようなアンバランスな関係は、徐々にバランスする関係に向かいます。
このアンバランスな関係は、L. Festinger の
『
Theory of Cognitive Dissonance(認知的不協和理論)』
でも言及されており、
このような内部矛盾を抱えた心地悪い緊張状態では、以下のようなケースにおいて不協和感が強くなるとされています。
- 矛盾点の重要度が高い。
- 矛盾点の矛盾を強く感じる。
- 矛盾点を指摘し合理化する能力が低い。
そして、この不協和感は、しばしば我々の信念や行動を変える強力な動機となります。
不協和感や緊張感を緩和するには、以下の3つの方法があります。
- 我々の信念を変える。
- 矛盾した認識を変えることにより、行動を正当化する。
- 新しい認識を加えることにより、行動を正当化する。
バランス理論の恋愛への応用
ここではバランス理論を恋愛に応用する方法を考えてみましょう。
アンバランスな関係
『私は彼が好き、けれども私は読書が嫌い、なのに彼は読書が好き』のケースにおいて、
相手の趣味は強引に変えられませんから、『彼が好き』な状態を維持したいのであれば、
『私が読書を好き』になる以外にバランスする関係はありませんから、そのような方向で努力するのが良いでしょう。
バランス理論によれば、片思いの相手と仲良くなるには、以下の方法で努力し、それをさりげなく会話に織り込むのが良いでしょう。
- 好きな人と共通の友人、共通の趣味、あるいは共通の好きな対象物を持つ。
- 好きな人と共通の嫌いな相手、共通の嫌いな趣味、あるいは共通の嫌いな対象物を持つ。